操縦士等に対する語学能力要件に関する調査研究委員会からの報告をもとに
日本航空機操縦士協会として関係の皆様に検討の進捗状況をお伝えします。
(いずれの事項についても委員会としての検討過程にあることをあらかじめお断りしておきます)
□最近の状況
2004年9月1日〜3日 モントリオールICAO本部にて語学要件に関する初回の公式シンポジームが開催されました。
(アジア・太平洋を対象とした地域セミナーは12月に東京にて開催予定)
シンポジームではICAOから発行されたガイダンスマニュアルに関する解説や各国の準備状況についての報告がなされました。
主なトピックスとして
・ICAOガイダンスマニュアルは各国がそれぞれの実情に応じた制度作りの参考にすること
・改訂されたICAO付属書の主旨は、航空無線通信においてはICAO Standard Pharaseologyの使用を原則とするもののであるものの、Standard Pharaseologyでは意思疎通が図ることができず一般言語を用いざる得ないケースも多々ある。そのときは簡潔明瞭で誤解の生じないよう手立てを構築することが必要である。現状においてはICAO Standard Pharaseologyに合致しない用語を使用している国が多数あり各国の適切な対応が求められた。
・国際運航にのみ適用される(操縦士はVFR・IFRに関わらず)
・管制官と操縦士では業務の役割が異なるので同一の試験を行うのは不適切
・各国で現在行われている語学試験の紹介(米軍、フランス航空大学校、中国操縦士、ペルー管制官)
・IATAから、ICAO標準用語の採用をはじめとしてICAOと協力して訓練試験などの制度を策定すべきなど幾つかの提言
・IFALPAから各国がICAOの語学要件に従うべきだが、特に米国はICAO標準用語を使用すべきとの主張
・ICAOは2006年に各国の進捗状況を調査し、必要な措置を取る
□わが国の進捗状況
引き続き「操縦士等に対する語学能力要件調査研究委員会」および技能証明制度や試験、教育に関するワーキンググループを設置して関係者による検討を行っております。
□語学能力要件導入に向けての検討経緯
(1998年)
英語能力に関する問題への取り組みに高い優先度を置き、英語による通信が必要となる空域において航空業務に従事する航空管制関係者及び航空機乗組員が、英語による無線電話通信を行い、且つそれを理解できるだけの語学能力を確保する為に必要な措置を締約国に義務付けるICAO総会決議がなされた。
(2000年)
ICAO事務局の下でスタディグループが設置され、専門家による検討、各国からの意見を聴取して付属書ならびにPANS-ATMの改定案が2003年3月にICAO理事会で採択された。日本においても関係先からの意見を聴取してこれを取り纏めてICAOに具申した。
日本航空機操縦士協会では航空局を通じて、日本の空も国際化が進む中、航空の安全を確保するために一般論としてパイロットは自己責任において英語能力を高める努力が必要であり、国としてもそうした環境を整える必要があるとの前提で以下の意見(要旨)を具申しました。
@航空の安全確保に必要なことはパイロットと管制官の確実な意志の疎通であり、そのために求められることは英語(管制用語)を使用したATCの交信および理解能力」である。
A技能証明の種類と等級、飛行する空域等の違いによって、求められる語学能力に差を設けるのが妥当であると考えられる。
B適用する場合には、国内の環境を考慮し必要とされる要件を具体的に明示して、充分な猶予期間を設けた後に実施されるべきである。
PILOT誌 5月号 (ワーキンググループにおける調査報告書等)を参照願います。
□平成16年度調査研究員会検討状況(平成16年7月23日 第2回委員会)
1. 制度導入に伴う技能証明書制度に関わる法改正も含めた進め方
1) 留意事項
@他国においても我が国の技能証明が有効と認められるよう、出来る限りICAOの標準を遵守し、相違のない制度とする。
A申請者の負担を軽減するために、可能な限り業務活動が停止される期間が生じなく証明を受けることが出来る制度にする。
2) 制度の骨格
業務独占資格を定めるものであり、航空身体検査証明等と同様に独立した根拠を法律上に設けるようにする。
@対象となる操縦士
・対象者は、国際運航を行う操縦士とする。(定期運送用、事業用、自家用)
ただし、航空機の種類については、「飛行機」または「回転翼航空機」に限定
A技能証明の有効期間
・技能証明書の有効期限は、次のICAOの勧告に従うことが望ましいが今後さらに検討する。
(ICAO勧告に定める期限)レベル4 3年 レベル5 6年
B試験の実施主体
・国のみが試験を実施することは困難であるので、試験の実施機関を国が指定し、実施に関する事務を行わせる形態が考えられる。その指定要件等は、公正性の確保を考慮し引続き検討する。
3) 制度改正のスケジュール
ICAO標準の適用時期に十分な余裕をもって制度を構築するために、 次期通常国会(17年1月開会予定)を視野にいれて、航空法の改正案を提出すべく検討を進める。
2. 操縦士等に対する語学能力試験および評価方法について
1) 留意事項
@ICAO標準を充足しつつ、日本人操縦士になるべく負担にならない試験・評価方法を検討する。
Aリスニングおよび対話の試験で必要かつ十分である。
B試験の内容は、航空通信に限定できる。
C既存の語学能力試験で唯一ICAOの要件を満たすPELA(フランスの管制官の為の英語能力試験)を参考とする。
Dリスニングおよび対話試験の設問、試験および評価方法のサンプルを今後作成する。
2) 今後の課題
@試験問題の題材収集
A評価基準の設定及びサンプル試験の運用評価
B対話試験における対話者・評価者の育成
3. 航空管制官等に対する語学能力要件の導入について (制度に係る文書より)
シカゴ条約附属書における標準においては、「飛行機及び回転翼航空機の操縦士」「航空管制官(air traffic controllers)及び航空管制通信官・航空管制運航情報官(aeronautical station operators)」に対しては、附属書に定めるLevel 4以上の能力についての実証をしなければならないと定められている。ただし、「航空管制官及び管制通信官」に対する資格制度については、我が国においては対象者が国の職員(航空管制官、航空管制通信官及び航空管制運航情報官)のみであり、航空法及びこれに基づく命令ではなく、国土交通大臣による訓令によって措置されていることから、語学能力の実証にあたっても、航空法及びこれに基づく命令の改正の必要はない |
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